このたび、令和3年6月15日付で新たに1件の文化財を指定しました。絵巻などの絵画を指定するのは初めてで、これにより松原市指定文化財は全部で7件となりました。
新たに指定した「来迎寺紙本著色融通念仏縁起絵巻」は、松原市の丹南にある来迎寺(融通念佛宗)が所有する上下2巻の絵巻です。融通念仏縁起絵巻は、平安時代の僧である良忍の伝記と念仏の霊験譚から成り、融通念仏の起こりとその教えが初めて絵巻としてまとめられた画期的な作品です。正和3年(1314)に最初の絵巻が作られて以降、江戸時代に至るまで多くの絵巻や本が作られました。
来迎寺に伝わる絵巻は、文亀2年(1502)に真言僧の行慶が転写したもので、元となった絵巻は至徳3年(1386)に大和国の中臣俊章が寄進したものです。これは、南北朝時代の勧進聖である良鎮が融通念仏の教えを広める目的で日本全国に配布するため制作した絵巻のうち1本です。これまで、大和の国人2人が寄進者として知られていましたが、来迎寺の絵巻により3人目の寄進者が明らかになりました。
絵巻の伝来ですが、元和9年(1623)に布忍清水村(現在の松原市南新町あたり)の僧浄安が来迎寺へ納める以前の消息は不明です。
絵巻ですが、所どころ話が欠けていたり順番が入れ替わったりしており、一部は後世に補われています。しかし、全体の残りが良く、絵の彩色も鮮やかさを保っています。絵の描き方は15世紀の奈良絵本風で、人物描写は同時代の他の絵巻と共通する特徴が見られますし、記された文字も当時の書き方で間違いありません。
この絵巻は、松原市を代表する室町時代の貴重な絵巻で、美術や歴史の研究を進める上でも重要なものです。今後、貴重な文化財を次の世代に守り伝えていけるよう努めていきますので、よろしくお願いします。
【文化財課】